チュニジアへの愛と将軍ハンニバルへの忠誠心で生きてるBYRSAM代表の細川です。
皆さんはチュニジアがどこにあるのか覚えていますか?
チュニジアは長靴の形をしたイタリア半島の対岸、2200年前の航海技術で3日の距離に位置します。
人口は東京と同じくらいの1200万人、宗教はイスラーム教、話されている言語はアラビア語とフランス語です。
特産品はデーツやオリーブ、陶器などが有名で、織物や金属加工にも秀でています。
真っ白な壁に青い扉が印象的なギリシア風の街並みだけでなく、豊かな自然が広がり、さらには北アフリカ最古のイスラーム建築までもが融合した独特の世界観で、南部にはかの有名なダースベイダーの故郷として撮影された灼熱の砂漠があります!
随分前に「ゴリラ」はチュニジア由来の名称ですよ、とお話もしましたね。
それでは今回は、みんな大好き神話の時間です!
チュニジアどのようにして建国されたのか。BYRSAMでも特に人気な【女王の海】のモチーフになっている、古代チュニジアの国名であるカルタゴの女王エリッサの物語をお話ししていきたいと思います。
1.カルタゴの建国はいつ?
チュニジアには2800年前〜3000年前に建設された都市が数多く存在します。その一つが現在、高級住宅街になっているカルタゴです。
カルタゴは紀元前814年に建国されました。
建国者の名をエリッサ、またはディドーといいます。
エリッサは現在のレバノンに点在していたフェニキア人の国家テュロス王の娘で、その後継者ピュグマリオンの兄妹でした。エリッサは主神メルカルトの神官と結婚し、ピュグマリオンとともに王の跡を継ぎます。
ところが、ピュグマリオンはエリッサの旦那に嫉妬して彼を殺害し、彼女の命をも狙います。
そこでエリッサは何人かの家臣たちを連れてテュロスを脱出し、放浪の末に北アフリカに上陸しました。
2.カルタゴは1枚の牛皮から始まった
エリッサは北アフリカの原住民に「1頭の牛皮で覆えるだけの土地が欲しい」と言って、土地を得るための交渉を行います。
原住民は了承しますが、なんとエリッサは牛皮を細かく切り刻んで長い紐をこしらえ、その紐で覆えるだけの土地を手に入れました。
この土地のことを「ビュルサ=牛皮」の丘と言います。
ちなみにBYRSAMはこのビュルサの丘が由来になっています。
3.カルタゴはレンタル国家だった
皆さんは意外に思うかもしれませんが、カルタゴは貸借地として始まりました。
国でありながら、土地はレンタルだったのです。実際に、考古学や歴史学の調査によって建国から300年間はレンタル料を払っていたことが判明しています。
人々は儲けを期待して集まり、住むようになりました。この人混みから一種の都市のようなものが生まれます。そこへ近隣のフェニキア系都市から使者が挨拶に訪れ、この地に都市を建設したらどうかと勧めました。
原住民たちもエリッサを引き止めたいと考えていたため、彼らと合意の上でカルタゴが建設され、この都市の地代が定められました。
4.結婚を強要される女王
やがてエリッサは先住民の王ヒアルバスに惚れ込まれて、結婚を強要されます。
王ヒルアルバスは女王の臣下を呼び出し、「私とエリッサの結婚を拒絶すれば、戦争を仕掛ける」と脅しました。しかし夫を失い、北アフリカまで逃れてきた女王にそのようなことは直接言えないと考えた臣下たちは、このように伝えました。
「王は自分とその臣下であるアフリカ人たちに、より文明的な生活を教えてくれる者を求めております。しかし、あんな野蛮なアフリカ人どもの元に嫁ぐ者など果たしているのでしょうか」
エリッサは、
「何を言うのですか。場合によって命さえも捧げるべき祖国のために、少々厳しい生活をすることを拒むのですか」
と叱りました。
臣下たちは「つまり王は貴女と結婚させろと言ってるんです」と話すと、エリッサは「自分が王ヒアルバスのもとに嫁がねばならない」という答えを引き出させられたことに気づきます。
後悔したエリッサは、遠い昔に失った夫の名を叫びながら号泣し、カルタゴと自分の運命に呼ぶところへ行くと言いました。
5.女王の最期
エリッサは3ヶ月かけて都の一番高い場所に薪を築かせ、生贄の獣を捧げます。
そしてその薪の山に登り、人々の前で
「あなた方が望んだように、私も夫のところへ行きます」
と言って自ら命を断ちました。
6.まとめ
以上が古代ギリシア人とローマ人に広く知られていたカルタゴの建国神話です。
エリッサの最後については下記のようなバージョンも存在します。
しかし、エリッサは夫の死に際して、「決して再婚しない」と誓っていたため、これを拒んで炎に身を投じて命を断ちました。
建国しから数世紀後、カルタゴは西地中海世界の覇者として君臨します。カルタゴが不敗の間、エリッサは勝利の女神として崇められたそうです。
しかしそれも紀元前146年までの話。カルタゴは滅ぼされてしまい、彼らの足跡はこの世界から消え去ってしまいました。
エリッサを始めとする、記述に残るカルタゴ人の女性は非常に高潔に描かれることが多々あります。
そんなエリッサたちのことをもっと知りたいと思ってくださる皆さんには、フローベル『サラムボー』、ペトラルカ『アフリカの詩』、ウェルギリウス『アエネーイス』をお勧めしますね♪
ぜひ読んでみてください♡