イスラーム教といえば、女性が髪の毛を隠したり、豚肉を食べることを禁止している宗教ですよね。

ところが髪の毛については地域差があり、たとえば若いチュニジア人女性は髪の毛を露出して歩いている姿をよく見かけます。

実は意外と、信仰がゆるい地域なのでは…?と思ったら大間違い。

さすが北アフリカで最も重要な巡礼地の一つであるだけあり、実はかなり信仰心が篤い地域です。

とはいえ、イスラーム教ってどんな宗教?って調べてみても、大抵は「神は一柱だけであり、預言者ムハンマドが天使から授かった啓典クルアーンを生活規範と定めている宗教」くらいしか分かりません。

今回は19億人の拠り所である、啓典クルアーンについてご紹介したいと思います!

 

 

  

 

 

1.神に身を委ねる実践の宗教:イスラーム

 

まず、イスラーム教の歴史を復習しましょう!

イスラーム教とは、600年代初頭(日本では聖徳太子の時代)に、アラビア半島で預言者ムハンマドが天使を通じて神の啓示を授かったことをきっかけに成立した宗教です。

ムハンマドはアラビア半島メッカの交易商人で、40歳のとき洞窟で瞑想している最中に神の啓示を受け、預言者となりました。

その後、アッラーに心身を捧げることを誓い、民衆にアッラーこそが唯一の神であると布教を始めたことが始まりで、アラビア半島を統一し指導者としての地位を確立します。

そんなイスラーム教は、ユダヤ教とキリスト教にルーツをもつ一神教です。

唯一神アッラーに服従・帰依することを教えとし、ムハンマドが授かった啓示をまとめたクルアーン(コーラン)を聖典としています。

 

👉3分で分かる!イスラーム教

 

2.イスラームの信仰と実践:六信五行

 

イスラーム教では生活のあらゆる全てがクルアーンによって定められています。

その中でも重要なあり方のルールのことを六信五行と呼びます。

五行六信とは、「ムスリムが信じるべき6つの事柄、ムスリムが行うべき5つの事柄」のことを指します。

これらも全て啓典クルアーンに書かれており、ムスリムの最も大切な義務とされています。

つまり、神は唯一神アッラーだけであり、啓典クルアーンこそが神が人間に与えた最後の贈り物であること。そして1日5回の礼拝だけでなく、喜捨や断食を通じて信仰を実践することを指します。

これらのことは全てクルアーンに書かれていますが、私たし日本人には馴染みがありません。

実はクルアーンはユダヤ教の旧約聖書、キリスト教の福音書が前身としてあり、最後に成立したのがクルアーンになります。

 

3.アーダムとハウワーの失楽園

人類の祖アーダム=アダムは泥から創られ、彼の腰からハウワー=イヴが創られました。

彼らはアッラーの恩恵を受けながら楽園で幸せに暮らし、全ての天使は二人に仕えました。

けれども、火から創られたイブリース=サタンは「なぜ火から創られた私が、泥から創られた人間に従わなければならないのか」と従いませんでした。

イブリースはアーダムとハウワーを呼び、禁断の果実を食べれば永遠の命を授かると囁きました。

そしてアーダムとハウワーは禁を破り、楽園から追放されてしまいます。

二人は放浪の末、アラビア半島に辿り着き聖殿を建て、最後はアッラーに罪を許されました。

 

旧約聖書では先に罪を犯したのはイヴとしていますが、クルアーンでは二人一緒に禁を破ったと伝えられています。

また、ユダヤ教とキリスト教はアダムとイヴが犯した罪を贖うことが、私たちの人生だとしてますが、クルアーンでは罪を赦されていることが大きな特徴です。

 

 

4.ヌーフの方舟 

 

預言者のヌーフ=ノアはアッラーの啓示を賢明に説いていましたが、人々は聞く耳を持ちませんでした。

ヌーフが神に助けを求めると、アッラーは啓示を下しました。

船を造り、全ての動物の番と、ヌーフの家族を乗せること

ヌーフは啓示に従い、大きな方舟を造ると、アッラーは人々の不信仰を罰するために水を降らせ、大洪水によって世界を覆い尽くしました。

やがて水が引くと、ヌーフの方舟はトルコとイランの間にあるアララト山に辿り着きました。

 

 

5.ムーサーの出エジプト記

 

預言者ムーサー=モーセは奴隷にされた仲間を救い、エジプトのファラオにアッラーを認めさせるために砂漠の国へ向かいます。

しかし、ムーサーの計画は失敗し、彼らは捕えられてしまいました。

ムーサーは数々の奇跡を起こし、海を割ってエジプトを脱出しました。

その後放浪の末にシナイ山でアッラーから十戒を授かったのです。

 

 

6.イーサーの物語

 

イーサー=イエスの母マルヤム=マリアは大天使から受胎告知を受けました。

マルヤムは処女でありながら懐妊し、やがてイーサーを産みました。

イーサーは成長し、ユダヤ教の戒律主義を批判し始めました。

ユダヤ教は一度でも罪を犯せば、死後の救いはありません。しかしキリスト教は「悔い改めれば」救済されるとしています。

イーサーは少年時代から数々の奇跡を起こし、泥から鳥を創り、盲目の人の目を癒し、死者すら蘇らせました。

人々は彼を神だと言いましたが、イーサーは「あくまで自分は人間だ」と殊更に言いました。

けれどもイーサーは彼のことを快く思わないものによって捕えられようとし、弟子の一人が身代わりになって十字架に架けられました。

ある伝承によれば、イーサーは120歳まで生き、いずれムハンマドが現れることを予言して、生きたまま天へ登ったそうです。

 

キリスト教においてイエスは神の子ですが、イスラーム教においては人間の子であることが大きな相違点になります。

 

 

7.世界の終わりの日

 

終末が近づくと、タージュージュとマージュージュと呼ばれる敵が世界の果てから現れ、双角王ズー・ル・カルナイン=アレクサンドロス大王がこれを封じ、最終的にイーサーがこれを倒します。

そして天使が終末を報せるラッパを鳴らすと、大地が光り輝き全ての生命が死に絶えます。

大地が粉々に砕かれ、空は千々に裂ける。
太陽が包み隠され、諸星が降り注ぐ。
そして大海が溢れ出し、世界が終わる。

こうして世界が終焉を迎えた後、天使が2度目のラッパを服と全ての死者が蘇り、最後の審判が始まります。

 

 

8.最後の審判

 

 

全ての人々が平地に集められ、私たちの生前に天使が記録してきた善行と悪行に基づいて、天国行きか地獄行きかが決まります。

信心深いものはアーダムが住んでいた楽園へ招かれ、美酒の川や新鮮な果実を好きなだけ飲み食いすることが許されます。

一方で地獄へ落とされた者たちは罪に応じた7つの地獄へ行き、火で焼かれたり、熱湯が注がれたりという責苦を味わいます。それでもイスラーム教徒はやがて赦され、楽園へ行くことができます。

 

 

9.なぜ、イスラーム教が成立したのか?

 

 

このように、イスラーム教は若干の差がありながらもユダヤ教とキリスト教と同じ世界観を共有しています。

そしてイスラーム教の場合は、救済のために実践する六信五行をクルアーンで定め、イスラーム教徒であるムスリムたちはこれを生活規範として暮らしています。

けれどもなぜ、イスラーム教が成立したのでしょうか?

現在、アダムが建てた聖殿はこの世にありません。

イスラーム教の聖地メッカにある神殿は、預言者イブラヒム=アブラハムによって再建された神殿です。

かつて、メッカの聖殿カアバ神殿には、日本と同じ自然崇拝に基づいた神々の像が安置されていました。

イスラーム教以前のアラブの時代を「無明時代」と呼び、当時のアラブ人たちは各部族ごとにいる守護神を崇めていました。

カアバ神殿が一神教のものである伝承自体はあったと考えられていますが、当時のアラブ人にとっては「数多いる神様のうちの一つ」としか見なされていませんでした。

メッカへの巡礼自体も当時からありましたが、人々は享楽に溺れて退廃し、貧富が拡大している社会だったそうです。

では、どのようにしてムハンマドが啓示を受けるに至ったのか、どうしてイスラーム教が生まれたのか?

なぜ、イスラーム教が世界で約19億人が信仰する宗教に至ったのかは次回の配信でお伝えしようと思います!

細川美優